神奈川県教育センター 理科テーマ別研修講座第8回
平成13年12月14日
「街中の石材散歩と化石鉱物」 内記 昭彦
【街中の石材散歩】
1)はじめに
石材は私たちにとって最も身近な地学的な野外観察の対象のひとつです。規模・種類・質などの差こそあれ、どこでも教材化が可能ですし、むしろ自然環境に恵まれない街中ほど有利な面すらあります。
教材化にあたっては、石材の種類の鑑定もさることながら、使用されている場所を見つける観察眼を、教師自身が養っていくことが大切ではないかと思います。
今回の研修会では、そのような点もふまえてご案内したいと考えております。
石材の教材化については、神奈川県立中沢高等学校・池崎文也教諭の継続的な研究があります。今回、神崎洋一指導主事にお願いして、池崎教諭に各界発表資料等の提供をご依頼していただきましたところ、ご快諾をいただき、貴重な資料を研修会用に添付することができました。石材についての概略・教材化例と有効性・神奈川県内の状況等が詳細にまとめられておりますので、ご一読いただければと思います。
2)石材の種類 (CONFORT No.6 1991autumun 参考)
石材の区分や名称は、地学・岩石学上での区分と若干違う部分があります。例えば、火成岩である蛇紋岩を大理石に区分したり、花崗岩・閃緑岩・斑糲岩・閃長岩等の深成岩をまとめて御影石(花崗岩)と呼んだりすること等です。
1.大理石
石材としての大理石は、色つやのよい装飾性に富む石を総称した呼び名であり、また、トラバーチンやオニックス、蛇紋岩なども含めて大理石と呼んでいる。
大理石の呼称は、もともと中国雲南省大理で採れる石材につけられたものである。日本では、現在は採石量が激減したため、建築材としては、ほとんどイタリア、スペイン、ギリシア、フィリピンなどからの輸入に頼っている。
●成り立ちと成分
水中のさまざまな物質や生物の遺骸が沈澱し、堆積してできる石灰岩が、熱の影響で変成し再結晶した「結晶質石灰岩」のことを大理石という。主成分は炭酸カルシウムで、方解石と呼ばれる無色、または白色の鉱物。
●意匠
石灰質の中に混入した鉱物によって白、ベージュ、灰、緑、紅、黒などの色が豊富。また無地のほか、縞・筋・更紗・蛇紋などの模様が入る。緻密で磨くと光沢がでる。
●石質の長所と短所
花崗岩にくらべて軟らかく風化が早い。しかも、酸によって溶けるため、屋外で酸性を帯びた雨にさらされると、半年から1年で表面のつやを失う。また、主成分の方解石には、劈開が見られるので、結晶のでき方によって、石質が異なる。しかし、軟らかいということで、花崗岩より短時間で加工ができるという長所がある。そして、模様や色調が美しいので、装飾用の内装材として欧米では古くから用いられている。
火に対しては、700℃を越えると生石灰になるが、花崗岩のように崩れることはない。
●用途
美しいことから、内装用の壁、床、化粧台、テーブル、種々の装飾品として使われる。
●仕上げ
表面仕上げは、色や模様を引き立てるために、つや出しをした本磨きが適している。
●よい石の見分け方
色の希少性で選ぶ場合、白・赤・黒など原色に近いものほど高級とされる。色むらや傷がない緻密なものほどつやがよく出て、摩耗しにくい。
2.花崗岩
一般に花崗岩は「みかげ石」と呼ばれる。「みかげ石」の呼称は、もともと神戸市御影町から採れる桜色系の黒雲母花崗岩につけられた名称である。「白みかげ」と呼ばれるのは、花崗岩や花崗閃緑岩であり、また「黒みかげ」は、斑糲岩や閃緑岩のことをさす。他に閃長岩なども含む。
花崗岩の産地は日本全国に分布し、茨城県の稲田石、瀬戸内海沿岸の万成石や北木石、香川県の庵治石などがよく知られる。しかし、国内の採掘量は年々減少し、銘柄によっては、量産ができないため、現在では世界各地からの輸入材が多く使われている。
●成り立ちと成分
花崗岩は、マグマが地中の深いところで徐々に冷えて固まった、結晶質のきわめて硬い石。主要鉱物は長石、石英、雲母。
●意匠
花崗岩は、一般にごましお状の結晶が均整のとれた表情をつくる。結晶の大きさによって大みかげ・中みかげ・小みかげと3段階に分ける。また、含まれる長石の種類や斑紋・形状、雲母の多少、あるいは有色鉱物の有無によって、黒、白、淡紅、暗紅、錆色など、色が豊富。
●石質の長所と短所
一般的に花崗岩は、他の石材に較べて緻密で硬く、摩耗しにくく、風化に強く、耐久性がある。しかし、白みかげのうち黒雲母を多く含むものは、雲、縞、黒ぼさ(黒いむら)などと呼ばれる石材の傷が入りやすく、屋外で使用する場合、やや風化が早い。
耐火性については、他の石材に較べると、やや弱く、500℃を越えると全体に膨らみ、700℃で崩れる。これは、長石、石英、雲母それぞれの膨張率が違うためである。
●用途
優れた耐久性を活かして建築外壁、意匠的には内壁、また通行量の多い場所の床や階段などに使われることが多い。そのほか墓石、石灯籠、門柱、欄干や土木用の基礎などに使われる。
●仕上げ
硬いので加工に時間がかかるが、様々な仕上げのバリエ一ションが可能。磨き、粗面、凹凸面など。
●よい石の見分け方
花崗岩は硬く耐久性もあるが、内装材として使用する場合には、石質よりもむしろ色や結晶の細かさなど、意匠の好みで選ぶ。
一般には結晶の細かい石ほど耐久性があり、上質とされる。また、黒みかげは、磨いた表面に結晶の破面が出てきらきら光るものがよい。
3.石灰岩(ライムストーンなど)
近年フランスやアメリカなどから、ライムストーンの名で輸入されている。色調は白、アイボリー、ベージュ系のモノトーンのものが多い。
石質は凝灰岩に近いものから大理石に勝るものまで幅があり、一般にはやや軟らかく強度が弱いとされ、耐水性に劣る。大理石と同様、酸性の水に弱いので、内装用の壁床材として用いられているが、良質のものは外装にも使える。
仕上げは磨きが施されるが、光沢はあまりない。石厚は大理石より厚くして用いる。
殻を持つ生物が堆積したり、海水中の成分が沈殿してできたもの。主成分は炭酸カルシウム。緻密で不純物を含まないものが良いとされる。大理石にくらべて粗粒だが、化石や空隙など独特の風合いがある。
4.安山岩(鉄平石や新小松石など)
国内各所で産出し、長野県の鉄平石などが知られている。色調は灰褐色のものが多く、色は暗く光沢がない。しかし、なかには神奈川県の新小松石や福島県の白河石のように、花崗岩に似た色と斑紋をもつ美しいものもある。壁や床などのほか、外構まわりに、あるいはテラゾの種石としても使用される。
石質としては、花崗岩には及ばないが、一般に硬質で、耐火・耐久・耐摩耗性に富むといわれる。仕上げは花崗岩と同様にする。
火山岩もしくは溶結凝灰岩で、主成分は角閃石、斜長石など。塊状、柱状あるいは板状で地表近くにあり、斑紋が均一で、傷のないものが上質とされる。
5.砂岩(サンドストーンや諌早石など)
国産のものもあるが、現在はインドなどから板石に加工したものが多く輸入される。光沢はなく、色や石質にさまざまな種類がある。成分の砂粒をつなぐ膠結物質が珪酸によるものは淡色で硬く、炭酸石灰によるものは灰色で加工しやすいが風化が早い。また酸化鉄か粘土質によるものは褐色。
強度は安山岩と凝灰岩の中間程度。耐火性は高く(珪酸系のものは低い)、酸にも強い。内外壁や床材に多く用いられるが、吸水率の高いものは外装に使うと凍害を受けることもあり、また汚れがつきやすい。層状に堆積し、水平方向に割れやすい性質を利用して、割り肌仕上げをする場合が多い。各種の砂が水中に沈殿・堆積し、固結したもの。堆積の過程などで、不純物が混ざることがあるが、しみや筋のないものが良質とされる。
6.粘板岩(玄昌石やスレートなど)
通称「スレート」と呼ばれる。宮城県の玄昌石(雄勝石)、稲井石(井内石)などの光沢のある、黒色のものがよく知られる。色調は一般に黒か赤褐色だが、なかには緑色のものもある。
容易に板状に加工でき、曲げ強度が強いため、5〜10mm程度の薄い板にして用いる。耐水・耐火性が高く、床や壁のほか、屋根葺材に使うことが多い。
破面に凹凸が少なく、大きな板石が得られるため、割り肌をそのままに用いる。
主に中古生層で粘土が固まった堆積岩で、多少の炭素物質や酸化鉄分などを含む板状の組織をしている。石質は緻密で、石英や硫化鉄などが混入していないものが良質とされる。
7.凝灰岩(大谷石や伊豆若草石など)
栃木県の大谷石、静岡県の伊豆若草石など。色調は淡灰や灰緑色など。混在する物質によって斑紋があるものもある。また時間が経つと変色することも多く、光沢がない。
石質は軟らかく、加工しやすい。強度や耐久性は低いが、耐火性は高い。在来の用途は倉庫や塀、また炉にも用いられている。壁材のほか、水に濡れると色が美しい伊豆若草石などは、浴室の床に敷くことも多い。
仕上げは、一般にひき肌またはのみ切り仕上げが施される。
火山灰や砂などが、主に水中で堆積し固結したもので、層状をなす。主成分は珪酸。不純物のない、均質できめ細かいものが良質とされる。
8.石英粗面岩(抗火石や天草石など)
抗火石の名で知られる伊豆新島産の軽石状の石材も、石英粗面岩の一種である。石質は一般に硬く、色調は灰白、濃灰のものが多いが、木目模様のものもある。多孔性で光沢はないが、耐火、耐酸、保温性に優れているので、壁や塀、暖炉の断熱材などに用いられる。
仕上げは割り肌など粗面のまま用いるほか、内装用にジェットバーナーで表面を焼いて滑らかにし、光沢を出すこともできる。
火山岩で、花崗岩と同様の成分からなり、長石や石英による斑紋が見られる。
9.テラゾ
テラゾは大理石や花崗岩などの砕石を種石(主原料として使う石)に、着色したセメントまたは樹脂をつなぎに用い、成型したもの。厚さは30mm程度から大きな彫像まで自在。以前は種石に大理石を使用したものだけをテラゾといったが、現在は、花崗岩や安山岩を用いたものもテラゾと呼ばれている。
最近、製法やデザインが多様化し、蛇紋岩やオニックス、ガラスやスラグ材、貝殻など種々の種石を使い、自然石にない味わいがあるものもある。
テラゾは、種石が均一に配され、表面に出る石の割合が大きいものが良いとされる。セメント系や、種石に大理石を使っているテラゾは、酸に侵されやすいので注意が必要。
他の自然石材と同様、輸送の条件や施工面積、また種石の種類などによって価格はまちまちだが、一般には自然石材に較べて安価であるため用いられることが多く、たとえば自然の大理石や花崗岩の規格品の約1/3〜1/2ですむ。
テラゾ製品には以下の種類がある。
●テラゾブロック
型枠に、鉄線で補強した裏打ち用のコンクリート(セメントに砂と砂利を混ぜたもの)を敷き込んだ後、種石を混ぜたコンクリートを加えて成型したもの。内壁や浴室などに使う場合は、本磨きに仕上げ、床や階投には水磨きが適している。テラゾブロックは、テラゾタイルに較べて大きさや形の成型が自由で、磨きの程度が良い。つなぎのセメント部分が汚れやすい。
●テラゾタイル
型枠に種石を混ぜたコンクリートを敷き込み、次に裏打ち用のコンクリートを追加して成型したもの。規格は300角(300×300mm)と400角(400×400mm)がある。表面を粗磨きにして床や階段に用いるのが一般的。
●樹脂系テラゾ
種石をポリエステルなどの樹脂で固めて塊状にしたものをスライスし、磨き加工をしたもの。床材などに用いられる。比較的折れにくいので、セメント使用のテラゾよりも、薄い板材があるが、熱に弱い。現在はすべてイタリアなどからの輸入品が使われる。
3)石材の入手先
●ホームセンター
主に庭用の割石等が最も安価に入手できる。種類は限られる。
●東急ハンズ
キレイにタイル状に研磨された石材が販売されているがやや高価。
●石材店
墓石や石碑が主体。自宅・学校の近所なら、交渉次第で教材用に端材の入手可。
●高島屋スペースクリエイツ(旧 高島屋工作所)横浜工場
〒244-0003横浜市戸塚区戸塚町455TEL. 045-881-2397
例年1〜3月頃の週末にアウトレット販売有り(折り込み広告)。その際に、端材や見本ピースの販売をすることがある。
※その他、最近ではアウトレットショップなど、思わぬところで入手できることがある。
4)石材関係会社のホームページ
安藤大理石東京
http://www.ando-m-t.co.jp/
石材のアヴィオントレーディング
http://www.aviontrading.co.jp/
Shonan Kohsan
http://www.yk.rim.or.jp/~00shonan/
IMPEX WORLD
http://www.big.or.jp/~impex/
ABC TRADING
http://www.abc-t.co.jp/
5)参考図書
化石ウォッチング in City,保育社,カラーブックス849,三宅・川瀬
新版 東京都 地学のガイド,コロナ社,東京都地学のガイド編集委員会編
東京の動・植物園と博物館化石etc.めぐり,築地書館,大森昌衛編
名古屋+周辺 ビル街の化石・鉱物 わくわく体験隊,風媒社,大野・下坂
修景石材と舗装,技報堂出版,小林・多田・藤田
季刊コンフォルト(CONFORT)No.6 1991autumun,特集石の魅力
CD-ROM
素材辞典 Vol.1 テクスチャー・石編 石の素材写真200点
素材辞典 Vol.24 大理石編 大理石・花崗岩の素材写真200点
jpeg・ pict・BMP各形式
株式会社データクラフト(http://www.sozaijiten.com)¥7,500-
6)備考
講師連絡先
e-Mail:a.naiki@nifty.com
ホームページ: http://www.asahi-net.or.jp/~gc7a-nik/
【新宿の石材】
東京の副都心新宿周辺には30棟あまりの高層ビルが建ち並び、外国産を中心とした様々な石材が見られる国内有数の場所となっています。今回はそれらのうちから、西口側の15カ所(予定)を選定しご案内したいと思います。
● 新宿西口石材散歩メモ
※番号1.〜15.は順路、(1)〜・Dは地図上の番号・記号
1.小田急百貨店・・・D
内部:10階 床・壁面 大理石(茶 含アンモナイト)
3階 床 大理石(茶 含アンモナイト)
1階 壁面 大理石(薄茶 トラバーチン)
B1階 エレベーターホール 壁面・床 大理石(薄ピンク、濃ピンク)
2.新宿アイランドタワー・・・(4)
外部:中庭 花崗岩(黒灰巨晶)
内部:エントランス 床・壁面 花崗岩(黒灰巨晶、白、赤)
3.ヒルトンホテル・・・(3)
外部:外壁 花崗岩(濃茶球粒状)
内部:ロビー床 大理石(ベージュ縞)
ロビー柱 大理石(ベージュ 含サンゴ)
B1店舗街 壁面 大理石(薄ピンク 含アンモナイト)
4.スクエアタワー・・・(1)
外部:柱 花崗岩(ラルビカイト)
床 花崗岩(白巨晶)
5.新宿グリーンタワー・・・(2)
外部:柱 蛇紋岩(灰緑)
床 花崗岩(茶灰)
6.新宿第一生命ビル・・・(11)
内部:スペースセブン 床 大理石(薄茶 藻類)
7.ホテル・センチュリーハイアット東京・・・(12)
内部:ロビー床 大理石(白、黒、赤)
ロビー柱 大理石(薄ピンク)
8.京王プラザホテル(北館)・・・(14)
内部:ロビー 床 大理石(ベージュ)
ロビー 柱 大理石(赤茶)
9.都庁(第1本庁舎・第2本庁舎・都民広場)・・・(13)
外部:敷石・外壁 花崗岩(白巨晶)
内部:エントランス 床・壁面 花崗岩(白巨晶)
10.新宿パークタワー・・・(20)
外部:敷石 花崗岩(ピンク巨晶)
内部:エントランス床・壁面 花崗岩(ピンク巨晶)
11.NTT東日本新宿ビル・・・(22)
外部:低層棟 外壁 砂岩(黄土)
12.東京オペラシティタワー・・・(23)
外部:外壁 花崗岩(白)
エントランス:花崗岩(白)
内部:2Fエントランスホール床 大理石(ベージュのトラバーチン)
2Fエントランスホール壁面 大理石(赤茶、灰、濃茶)
12.あいおい損保新宿ビル・・・(21)
外部:敷石 花崗岩(赤)
柱・外壁 花崗岩(閃長岩:灰茶針状結晶)
13.文化女子大学・新都心キャンパス・・・(25)
外部:外壁 花崗岩(灰)
内部:エントランス床・壁面 大理石(ベージュ)、蛇紋岩(緑)
エントランス柱 大理石(灰)
14.コリンズタワー・・・(26) ※差し押さえで閉鎖中
外部:外壁 花崗岩(濃緑・ピンク巨晶)
内部:床・壁面 大理石(ベージュのトラバーチン)
15.新宿NSビル・・・(18)
内部:エントランスホール 大理石(黒、白)
※クサリサンゴ等多数
以上、新版東京都地学のガイド(コロナ社、講師共著)p.55〜57を元に作成