
地層のはぎ取り標本の作製法(鈴木進先生)
はじめに
中学校理科「地層と過去の様子」の学習活動では、露頭観察を行い堆積構造の規則性を見つけることや地層のつながりを考察させることが目標となっている。しかし、適切な露頭が近くに無いことや、地層を対比するための時間を確保できないなどの問題を抱えている。そのため、机上の思考実験や観察を伴わない知識の教え込みだけに終わってしまうことが多いようである。また、視聴覚教材などの利用も行われているが、露頭観察に比べて情報量が少ないことや興味・関心を高める効果という点では問題がある。そこで、できる限り実際の露頭に近い教具として、地層のはぎ取り標本の活用が考えられる。以下に簡単で安価なはぎ取り標本の作成方法とその教材化について述べる。
1 はぎ取り標本の作成方法
(1) 原材料
・トマックNS-10 (成分ポリウレタン94-95%、 エチルアセテート5〜6%)
・ガーゼ・・補強材 30(幅)×1000(長さ)p
第1図 原材料と用具
(2) 用具
脚立(剥ぎ取りの規模に併せて)、刷毛2本 (毛が多く握りがしっかりしているもの)、ポ リエチレン製手袋3枚程度、2g程度の空き缶 2個、園芸用噴霧器1個
(3) 製作手順
この方法は、関東ローム層のはぎ取りに適している。更新世以降のレキ層程度ならこぶし大のレキでも剥ぎ取ることができる。
軽石などを層状にはさんでいる部分を含む露頭が教材としてよい。また、地層の対比を考えて、複数地点のの剥ぎ取り標本を作成する。その際、対比する鍵層を含めて剥ぎ取る必要がある。
@ 露頭面を整える・・剥離しようとする面は、できるだけ平滑にする必要がある。そのため、露頭表面を両刃鎌等を用いて、露頭面を削り凹凸をなくす。
A 露頭面に水を含ませる・・ここで使用するト
マックNS-10という樹脂は、露頭面に水分が充分に含まれている状態で使用するようになっている。
水は、園芸用薬剤憤霧器を使用して、ならし た面にふりかける。露頭面の濡れ方が不十分の 場合は、複数回憤霧する。
B 樹脂の塗布・・トマックNS-10を2g程度の空き缶にいれる。刷毛は毛の多い腰の強いものを使用する。樹脂をたっぷり刷毛に含ませ露頭面に塗る。面に塗る時は、刷毛をすべらせないで、上から抑えるように塗る(刷毛をすべらせると露頭面が乱される)。
C 補強用ガーゼを貼り付ける・・樹脂だけでは、十分な強度を得られないので、ガーゼで裏打ちする。ガーゼは市販の30p幅のものを使用する。樹脂が乾く前に、ガーゼを塗布面に貼り付ける。貼り付けた面を手で押さえ、ガーゼを樹脂面に密着させる。密着したガーゼの上からさらに樹脂を塗り付け補強する。(強度が不十分なときには、さらにもう一枚ガーゼを重ね、樹脂を塗布する。)
D 樹脂を硬化させる・・2時間程度放置すると樹脂は固まる。ゴム系の樹脂のため弾力性がある。手でさわってベトつかなければ良い。
E 標本を剥す・・標本は上部より接着の様子を見ながら丁寧に剥す。露頭面が硬く土がつきにくい場合は、スクレイパーで土を削りながらはがす。
F はぎ取り標本の後処理・・剥離面についている土は、全てが樹脂で接着していないので崩れ落ちるものもある。これらのものは、水で洗い流し、
剥離面を安定化する。水洗いをするとき面を強く
擦らない。水の勢いで洗い流す程度とする。
G 展示用に補強する・・はぎ取り標本はゴム系の樹脂をベースとしているので腰がない。そのため、展示目的に標本を仕上げるためには、裏にベニヤ板等を貼り付ける固定する。
H 保管・移動・・ゴム系樹脂のため、丸めて保管・移動ができる。但し、標本面を強く擦ると面が痛むので注意する。
I 観察・・観察する前に霧を吹いて、面に水を含ませると面の様子が明瞭になる。
表面に透明ラッカーを塗布すると露頭で見られる様な感じとなり、表面の耐久性が増す。
2 教材化の留意点
教材化をするときの注意事項としては、以下のことに留意して行うとよい。
@ 露頭観察ができる場合は、露頭を観察させる。
はぎ取り標本は、堆積構造や露頭同士の対比には効果的であるが、実際の露頭の周囲の様子がわからないので採取現場の様子をスケールの入ったスライド写真やビデオカメラなどで撮影したものをみせ露頭の全体的な状況を核にさせておくとよい。
A 露頭面をはぎ取ってくるためにどうしても地層の奥行きの理解が不十分になる。そこで、スライド写真やビデオカメラを用いて地層の奥行きを読みとれるシーンを撮影しておき、地層の奥行きに対する理解を深めておく。
B はぎ取った部分の試料を採取し、手触り、粒径、硬さ、含まれる鉱物等をしらべる。
C 水中堆積物の場合、採取した試料を用いて、
級化構造のモデル実験を平行して行い実際の堆 積構造と対比する。
D 地層の対比は、堆積構造ばかりでなく、含 まれる化石や粒子の大きさ・種類なども調べる ことにより確かめられることを理解させる。